★Q1: 亜鉛(ジンク)と鉛は関係があるのでは? ×亜鉛は毒 ○亜鉛は鉄に次いで大切な必須ミネラルです 亜鉛は鉛と混同され,身体に悪いという先入観を持っている方が大勢いますが,亜鉛は 鉄の次に大切な必須微量金属です.亜鉛は身体の成長のもとになる蛋白合成に欠かせな い必須ミネラルで,細胞の増殖を促進するRNA(リボ核酸)や遺伝子を中継するDN A(デオキシリボ核酸)の合成をします.また,インスリンをはじめ,なかでも,男女 『生殖機能』への働きは際だっており,アメリカでは『セックスミネラル』として大量 に使用されています. 人体が含有する亜鉛は2〜3gで,このうち50%は血液中に,25%は骨や皮膚に, 残の25%は各種臓器に含まれています.【表1,表2参照】 亜鉛は体内各部分の生体化学反応および代謝に応じて蛋白質,酵素等と結合し,血液を 介して各臓器,骨と各部細胞間を移動します. 亜鉛の機能についてはまだまだ道野部分が多く今後の研究が待たれますが,最近の医学 薬学栄養学によると,亜鉛には次のような基本機能があるとされています. 表1;人体中の必須微量金属の含有量(体重70sの男性) 元素名 含有量(g) 含有濃度(μg/g) 鉄 4.0--6.0 57.1--85.7 亜鉛 2.0--3.0 28.5--42.8ハ マンガン 0.1 1.43 銅 0.08 1.14 セレン 0.012 0.171 モリブデン 0.01 0.143 クロム 0.002 0.029ハ コバルト 0.0015 0.021 表2;体内の亜鉛含有量(μg/g灰分) 器官 平均値 範囲 90%範囲 前立腺 6300 1500--9600 腎臓 4500 2300--6500 肝臓 3200 1600--6000ハ 心臓 2500 1500--3700 膵臓 2200 1000--3500 大動脈 1950 900--3000 卵巣 1600 750--2800 こう丸 1300 680--2500 脾臓 1300 900--1900 肺臓 1300 660--1700ハ 脳 750 480--1050 上記以外でも眼,側頭葉の海馬にも多く含まれる (財団法人緒方医学化学研究所「微量金属代謝」第1集) @蛋白質の合成・DNA・RNAの合成・代謝の促進 亜鉛をアミノ酸が結合して蛋白質の構成を安定的に保ち,細胞分解,DNA・RNAの 合成に重要な働きをします.多数の亜鉛蛋白質の存在が確認されており,最近では遺伝 子に関わる亜鉛フィンガーという活性蛋白質が発見されています. A蛋白質の分解・消化 亜鉛は,蛋白質の合成だけでなくその電子特性により,蛋白質を分解・消化する機能が あります.鉄や銅が酸化還元反応に関係するのと異なり,亜鉛は加水分解反応に関係す ることが分っています. B人体の生化学反応を制御する各種酵素の生成ハ 亜鉛は酵素と結合して多様な生化学反応を媒介・制御します.カルボキシペプチターゼ ,サーモリシン,ロイシンアミノペプチターゼなど,現在まで100種以上の亜鉛酵素 が発見されています. ======================================= これら@〜Bまでの点から,亜鉛は人体の成長,代謝作用,各臓器機能の正常化(生殖 機能の強化),脳細胞および中枢神経の発達,創傷の治療作用に重要な働きをします. C重要ホルモンの生成に関与 さらに亜鉛はインスリン,テストステロン,FSH(卵胞刺激ホルモン)LH(黄体形 成ホルモン)等,重要なホルモンの形成に関与しています. 特にインスリンについては,インスリンの生成だけではなく,インスリンの作用である 糖代謝にも亜鉛が不可欠であることと言われており,糖尿病の改善に有効です・ D亜鉛は基本的な免疫系を賦活化し,免疫機能に不可欠 亜鉛は歳とともに衰えて来る甲状腺や胸腺の免疫系とも深い関係があり,T細胞(特に リンパ球)を増加させるなど,免疫系を活性化します.また増え過ぎると癌や成人病を 引き起こすといわれる活性酸素(フリーラジカル)をコントロールする酵素(SOD等 )の作用に,亜鉛は欠かせません.亜鉛の免疫系における作用は,人体のマスターホル モンといわれる松果体のメラトニンに似ているといわれています. ★Q2亜鉛(ジンク)は人体に必要なもの? ×亜鉛など特に必要ではない ○中高年男性の成人病や生殖機能障害には,特に亜鉛が必要です 亜鉛は十二指腸から吸収されますが,年令ともに吸収率と貯蔵能力は低下します.アメ リカでは40才を過ぎたらサプリメントで補給するのが常識になっています. サプリメントのメリットは,食品からの摂取に比べてカロリー過剰にならず,必要量を 効果的に摂取出来ることです. 亜鉛が欠乏すると,体内分布からも分る通り,生殖機能に関わる障害が起りやすくなり ます.主な欠乏症は次の通りです. 1.生殖機能の不全を起します 2.前立腺炎の原因となります 3.糖尿病の要素となります 4.免疫不全,骨格異常の一因になります 5.免疫不全を引き起こし,病気にかかりやすい体質になります 6.身体面,精神作用面ともに活力に乏しい体質になります 7.味覚障害や臭覚障害,陽性肢端皮膚炎を起します 8.創傷に対する治癒力低下を招きます 9.コラーゲン代謝不全を招皮膚,毛髪の異常を起します 10.高血圧,動脈硬化,『ボケ』の一因といわれています 11.癌や成人病の誘因になります 12.血中亜鉛濃度の低下が種々の老化的機能障害の原因であるとの説があります ------------------------------------------------------------------------------ ★Q3若い人には必要ないんじゃないの? ×まだ若いから亜鉛は不足していない ○アメリカでは大学生(男子)の23%が無精子でした フロリダ大学の調査によると男子学生の23%が精液1CCあたりの精子の数が2000 (無精子とみなされ,不妊の原因となる)以下であったといわれ,これがあめりかでの 亜鉛ブームのきっかけになったとされています 生殖機能に関わる器官には,前立腺,こう丸,副こう丸,精嚢,精管などがありますが ,亜鉛が不足すると,これらの器官に様々な障害を引き起こします. 1.射精能力の不全;精液量の減少,性感の低下 (正常な精液は白色だが,異常が起ると黄色みを帯びてくる) 2.精子の異常 ;精子の数の減少,精子の異常(奇形),が起りやすくなります. (不妊の原因になる)ハ 3.陰茎の機能不全;勃起不全,持続力の低下,硬度低下が起ります. ----------------------------------------------------------------------------- ★Q4亜鉛(ジンク)を摂っても効き目はどこでわかるの? ×亜鉛の効目がはっきりしない ○尿の『切れ』が良くなるので,自覚症状がはっきりでます 前立腺への亜鉛供給量を増やすことで前立腺肥大などの前立腺炎を改善でき,その結果 排尿の勢いが増します. 前述の通り,亜鉛は前立腺に最も多く分布しており,老化による中高年男性の前立腺炎 は亜鉛の不足が引起こす代表的な症例です ------------------------------------------------------------------------------ ★Q5必要なのは男性だけでしょ? ×亜鉛が必要なのは男性だけ ○女性にも亜鉛は欠かせません 亜鉛は女性の生殖器に働くだけではなく,胎児や乳児の正常な成長を促進する働きも備 えています. ★Q6食事に気をつけてれば自然に摂れるんじゃ? ×亜鉛は食物から充分取れている ○亜鉛は熱に弱く調理で壊れます 食品にはかなりの量の亜鉛が含まれているのは事実ですが,食事から亜鉛の必要量() を摂取しようとすると,カロリー過多で肥満を招きかねません. 自然の食品には亜鉛が微量ずつ含まれていますが,加熱により大幅に減少します.下の 表は代表的な食品の,加熱前と加熱後の亜鉛含有量を示しています. 表8 代表的な食品の亜鉛含有量(mg/100g) 食品名 mg 食品名 mg 食品名 mgハ 【穀物】 【魚類】 【肉類】ハ 玄米 6.44 かつお 0.80 牛肉 5.00 精白米 3.79 さけ 0.40 豚肉 2.05 小麦薄力粉 8.02 さば 0.50 羊肉 4.00 ふ 19.09 さんま 1.32 鶏肉 1.68 まいわし 1.57 鶏卵 5.97 【芋類】 いか 1.20ハ さつまいも 0.32 いいだこ 2.50 【野菜】 じゃがいも 0.66 あさり 2.79 パセリ 2.67 さといも 1.86 あわび 1.72 ピーマン 0.42 やまのいも 0.55 かき 73.07 ほうれん草 1.16 さざえ 10.13 だいこん 0.56 【種実類】 しじみ 3.53 にんじん 0.40 アーモンド 10.73 キャベツ 0.34 ごま 14.00 【藻類】 トマト 0.40 ピーナッツ 3.73 あまのり 27.40ハ 根こんぶ 2.00 【その他】ハ 【豆類】 わかめ 6.06 ココア 21.73 あずき 5.04 かんてん 28.00 煎茶(一番茶)135.20 大豆 4.33 抹茶 133.50 絹ごし豆腐 1.70ハ 表6 加熱による食品の亜鉛含有量の変化 食品名 加熱前 加熱後 食品名 加熱前 加熱後 精白米-->ご飯 3.79 1.18 そば粉-->そば 6.35 1.11ハ もち米-->もち 3.83 1.14 そうめん 2.00 0.99ハ 小麦粉-->パン 8.02 1.09 マカロニ 7.40 1.30ハ ★Q7亜鉛(ジンク)と味覚に関係あるって本当? 最近、若者や女性の間で「食べ物の味の違いを感じない。」「何も食べていないのに口 の中が変。」などの味覚異常が増えているのをご存じですか。ハ 味覚は舌にある、3,000〜4,000個の味蕾細胞という器管により感じられますが、その機 能が正常に働くには、必須微量元素である亜鉛(ジンク)が不可欠となります。亜鉛は味 覚をつかさどるだけでなく、皮膚組織の維持、生殖機能や腸管粘膜機能の維持、骨格の発 育促進など、生体内で重要な役割を担っています。そのためこれが欠乏してくると、味覚 障害、成長遅延、創傷治癒遅延、脱毛などが起こってきます。さまざまなインスタント食 品の出現や過激なダイエットによる食生活の変化が亜鉛の欠乏をもたらしていると言えます。ハ ★Q8一日どのくらい摂ればいいの? ×亜鉛は毎日15mg摂取すればいい. ○亜鉛は摂取しても100%は吸収できません.一日15mgではたりません. FDA(米国食品医薬品局)基準値は,1日あたりの亜鉛必要量を15mgとしていま すが,これは亜鉛の体内蓄積量が充分な人のケースです. 亜鉛は,大便,尿,膵液,汗などを通じて体外へ排出されます. 排出量は1日12mg〜14mgとされています. 摂取した亜鉛は100%体内に吸収されないので,排出量に見合った亜鉛を補給する為 には15mg摂取するだけでは足りません.加えて,もともと亜鉛の体内保有量が少な い人の場合,さらに大量の亜鉛摂取量が必要になってくる訳です. 表10 亜鉛の必要量の基礎データ(成人男子平均値・体重70s) 数値 備考 体内の亜鉛保有量 2〜3g ※ネフローゼ,糖尿病,肝硬変,高血圧 1日当り排出量 12mg〜14mg の場合,尿への排出はさらに増加 表11 亜鉛の安全性(1日15mg以上摂取した場合) 結論 備考 無毒です 大量投与による人体への悪影響は認められません.亜鉛は標準体重摂 取量と摂取限界量(2000mg/日)の差が大きいためです. ただし,他のミネラルを排除する働きがあり,とくに銅を排除します .カドミウム,水銀などの重金属類の排除作用が強く,かつて「イタ イイタイ病」の治療に用いられたケースがあったようです. 安全です 人体はネガティブ・フィードバック・システムを備えており,亜鉛を 大量摂取しても,血清亜鉛値を一定に保ちます. 血清の亜鉛濃度が高い場合,腸の亜鉛吸収率は低くなる. 血清の亜鉛濃度が低い場合,腸の亜鉛吸収率は高くなる. 実験では1日当り400mg投与しても,血清亜鉛濃度は170〜180mgを越 えないと報告されています 表3 精液の生成場所 ハハハハハハ 器官ハハハハ 生成量 分泌液 前立腺ハハ 35〜40% ハハハハハハ 精 嚢ハハハ 55〜60% ハハハハハハ 精 管ハハハハ 微 量ハ 精 子ハ こう丸ハハ 詳細別紙 ※1回の射精の精液量は1〜3.5ccといわれます 表4 精子の量 正常なケースの平均値 精液1ccあたり4000〜6000万 妊娠能力が低い場合 〃 4000万以下 無精子と見るケース 〃 2000万以下 ※射精1回あたりの精子の数は1億5000万〜4億といわれます 表5 亜鉛不足による前立腺炎の症状 排尿不全------排尿の勢いがなくなり,排尿に要する時間が長くなります. これは前立腺の肥大により尿道が圧迫されるためです. 残尿感--------排尿が終っても,尿がまだ残っている感じがします. これも前立腺の肥大により尿道が圧迫されるためです. 失 禁-------排尿後,椅子に座った時など,座面からの圧迫で,微量の失禁を するようになります. 表6 亜鉛の前立腺肥大への働き 排尿の改善 尿の勢いがよくなり,排尿時の快感が増します. 「尿の切れ」が良くなったという自覚症状が現れます 男性生殖機能 さらに亜鉛の効果が進むと,勃起不全,持続力不足,硬度低下などの の回復 男性生殖器の回復につながります. 亜鉛が精嚢,精管,副こう丸に働き,分泌液や精子の生成を促進する た め,年令による男性生殖機能の衰えを補います. 若々しさを取戻せる訳です. 表7 亜鉛不足による女性の諸症状 ◆生殖機能の低下 卵子の形成や分泌液の生成が阻害されます 米国の研究によれば,無亜鉛食を半年間与えると,FSH(卵胞刺激ホルモン)やLH (黄体ホルモン)の量が急激に降下したと報告されており,亜鉛不足が不妊につながる ことが実証されています. ◆胎児の発育不全 胎児の正常な発育(特に脳の発育)や免疫力が低下します. 細胞の増殖を促進するRNA(リポ核酸)や遺伝子を中継するDNA(デオキシリポ核 酸)をはじめ,体の成長のもととなる蛋白質合成,ホルモンや酵素の生成が,亜鉛不足 で異常を起こすためとみられます. ◆乳児の発育不全 乳児の体(特に生殖器官)の成長不全をはじめ免疫不全,脳の発達不全がおこります. 心身ともに元気な子供を産み育てるには母体に充分な亜鉛が必要です. 通常,母乳には必らず亜鉛が含まれていて乳児の成長に大きく関わっています.そのた め母乳から亜鉛を摂取できない乳児の為に,粉ミルク(母乳代替品)には,硫酸亜鉛, グルコン酸亜鉛が食品添加剤として配合されています. 亜鉛を食品添加剤として厚生省が認めているのは,この母乳代替品だけです. (以下日経ヘルス10月号)
ジンクは人体にとって非常に重要なミネラルであるにも関わらず,これまで日本ではほとんど 普及していません.日本ではミネラル全般に対する認識が薄く,特にジンクに対しては、訳語 が「亜鉛」となっていることによって鉛と特に同じではないか”という間違った理解が多く, 適切な商品が少かったためと思われます。 ハ 生物をはじめ植物や動物、さらには人が生きていくために、必須の元素があります。亜鉛 もその一つで、わたしたち人間のからだにも微量ながら含まれていて、鉄や銅などとともに、 生体内必須微量元素とよばれています。亜鉛は、酵素の成分や蛋白質の合成、味覚への関与、 インスリンの生成や機能への関与、また免疫能の賦活や生殖機能そのものなどに重要な役割 を果たしています。 ハ また、亜鉛は古くから医薬品として、わたしたちの生活の中で使われています。その代表 的なものが亜鉛華軟膏です。これは、亜鉛が皮膚の新陳代謝に作用し、創傷を修復する作用を応用しています。
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免疫力を高める |
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ニキビ、風邪から糖尿病、老化防止まで ハ亜鉛は今、最も注目されているミネラルだ。
味覚障害は亜鉛をとると回復することが多い。そこで、亜鉛を多く含む「牡蠣」の料理を週2回食べること、これも亜鉛を多く含む「かぼちゃの種子(ローストされた市販品)」をおやつ代わりに噛むことを勧めた。同時にサプリメントとして、吸収の優れた亜鉛(1日分で9mg)を含むマルチビタミン剤を勧めた。Tさんの症状は1カ月ほどで改善し、2カ月後にはすっかり回復した。 微量栄養素であるミネラルは、炭水化物(でんぷん質や糖分)、脂質、たんぱく質、ビタミンと並ぶ5大栄養素の一つ。日本人は、3大栄養素である炭水化物、脂質、たんぱく質はほぼ十分に食べているが、ミネラルやビタミンは不足がちだ。未精製のでんぷん質(玄米や全粒粉)や新鮮な野菜・海藻類を食べることが少なく、加工度の高い食品(熱処理した食品、添加物の入った食品、スナック菓子、清涼飲料水など)を多く食べることなどが原因とされている。 ミネラル自体にカロリーはないが、たんぱく質やビタミンとともに、体の組織をつくったり、生理作用をコントロールする重要な役割を果たしている。人体は主に、酸素、炭素、水素、窒素(いわゆる多量元素)で構成され、全体重の約96%を占める。残りわずか4%がミネラルだ。 ミネラルと聞いてまず思い浮かぶのは、カルシウムや鉄だ。亜鉛は、人体に存在することすら知らない人が多いかもしれない。亜鉛は、体重60gの成人で2gほど。その2gが体の成長はおろか、私たちの生命活動そのものに深くかかわっている。 ほとんどの亜鉛は、体の中で酵素と結合している。酵素は、体内の化学反応(エネルギーを出したり、食物を消化したりする)をスムーズにする働きをもつ。消化酵素がよく知られているが、ほかにも体内には3000以上の酵素が存在し、神経の伝達や細胞分裂、免疫機能など、あらゆる生命活動と関係している。このうち亜鉛がかかわる酵素は10%。約300の酵素は、亜鉛がないと働くことができない。 亜鉛の存在は古くから知られていた。日本でも皮膚の炎症や創傷を治療する軟膏に使われてきた。が、人体における亜鉛の重要性が初めて報告されたのは1963年。きっかけは、イランの一部の地域で当時風土病といわれた小人症の男性の治療だった。彼らは20歳を過ぎても、どう見ても10歳にしか見えず、明らかに発育不全だった。加えて貧血、性腺機能低下症、肝脾腫、皮膚の粗さ、精神的な鈍感などの症状も見られた。原因は、まもなく食事にあることが明らかになった。亜鉛の吸収を妨げるフィチン酸という成分を含んだ未発酵のパン(フィチン酸は発酵すると分解される)を食べていたのだ。加えて、亜鉛の補給源となるたんぱく質をとっていなかった。この小人症は、亜鉛を投与することで著しく改善した。 ストレスが多いと 亜鉛が不足がちになる理由にはいくつかある。一つは食事からの亜鉛不足。麺類やパン類ばかりを多く食べ、亜鉛を多く含む動物性たんぱく質をほとんど食べない食生活(特に女性に多い)をしていると、亜鉛不足になりやすい。また、加工食品に含まれる食品添加物(かんすい、膨張剤、乳化剤と表示されることが多いポリリン酸ナトリウムなど)が、体内に取り込んだミネラルの吸収を抑制する働きがあることも見逃せない。私たちが毎日口にする精製された白米や小麦を使ったパン、麺類も、ミネラル不足に拍車をかける。ミネラルをより多く含む胚芽・米ぬかや麦芽などを精製の過程で失っているからだ。 成人の場合、1日当たりの亜鉛の推奨摂取量は15mgとされる。ところが、日本人の成人男子の平均摂取量は9・1mg、女子は7・3mgとかなり低い。 特に、老年期(ボケ・前立腺肥大防止)、中年期(精力維持)、妊娠前(不妊防止)、妊娠期(流産・奇形発生防止)、経口避妊薬(ピル)使用時(血液中の銅が高く、亜鉛が低くなる結果、イライラ・鬱状態を招くリスクが高くなる)、女性(美肌・つやのある髪)、乳幼児期(食欲不振・発育不良を招きやすい)、思春期(性の発達が遅れる)では、亜鉛不足に注意が必要だ。 そのほか、病中病後、アルコールをよく飲む人、ストレスを強く受けている人、激しいスポーツをする人も亜鉛の必要量が増加する。汗1r中には1・15mgの亜鉛が含まれ、ひどく汗をかくと4mg以上が1日に失われる。また、膵液1r中に1mg以上の亜鉛が含まれるので、長期の下痢が続くと亜鉛欠乏の原因となる。さらに、男性は1回(4・5cc)の射精で約1mgの亜鉛を失う。女性は月経中に0・4〜0・5mgの亜鉛が血液とともに失われる。 亜鉛が不足すると、どんな症状が起こりやすくなるか。味覚、嗅覚の異常は代表例だが、各種の皮膚トラブルも、亜鉛不足が原因していることがある。 アトピー性皮膚炎患者の毛髪中のミネラル量を調べると、健常者に比べて水銀などの体に有害なミネラルが極端に多く、亜鉛などの必須ミネラルが少ないことがしばしば指摘される。亜鉛やセレンには、人体に有害なミネラルの体内吸収を妨げ、排出を促進する。また、かゆみ物質と呼ばれるヒスタミンの生成を抑える働きもあることから、亜鉛がアトピーの症状改善に役立つのではと、注目されている。 一方、血液中に含まれる亜鉛の量を調べると、すべての年齢層の中で13〜14歳の男性が最も低いというデータがある。つまり思春期にひどいニキビに悩む男子のほとんどは、亜鉛が慢性的に不足しているといえる。ニキビ治療において、「亜鉛は経口の抗生物質療法と同じくらい有効」とする研究報告もある。 亜鉛不足は爪や毛髪にも表れやすい。爪の角質細胞にはケラチンという繊維たんぱく質が多く含まれる。亜鉛不足になるとこの合成がうまくいかず、爪に縦ジワが増えたり、白斑ができたりする。同じくケラチンを含む毛髪も、亜鉛が不足するとパサついたり、脱毛したりしやすい。 亜鉛不足の食生活で 亜鉛の効果的な取り方 |
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