カラオケfan5月号拡大

 

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●第14回 いま私は・・・

三善英史

「『雨』を及第点で歌えた時が最高」、繊細な歌を支える芸人の強さ

■最新シングル「ぬくもり」2月23日発売

「最近の活動ですか?特に普通の歌手の人と変わりないんですけどね…。ステージに立って歌うのが僕たちの仕事ですから。それにテレビ・ラジオ番組への出演や、こうした新聞・雑誌の取材ですね。ただ、今って音楽番組の数も少ないし、テレビに出るのも難しいですからね。それで、しばらくブラウン管から遠ざかってると、もう辞めちゃったのかなんて思われることも多くて、これには困っちゃいますよね(笑)」。2月23日にはガウス・エンタテインメントに移籍しての第-弾シングル「ぬくもり」(高島じゅん子作詞、桧原さとし作曲)を発表する。「今回はあえて演歌っぽいものをってお願いしたんです。僕って『雨』(昭和47年発売のデビュー曲。このヒットで、同年の日本レコード大賞新人賞を受賞)のラインの印象がとても強いんですよね。それはとてもありがたいことだし、そこが自分の主流であることも確かなんだけど、それしかないって思われてる感じがあって、まあ言ってみたら歌の引出しを増やすような気持ちで、歌っていこうと思ってるんです」。

■リアルを歌うか、それとも演じ切るか?

彼の優しく線の細いイメージは、"演歌。よりも"歌謡曲。、そして男歌より女歌に結びつきやすいが、そのあたりは当然、三善自身もよくわかっている。「ステージでは男歌もうたいますよ。でも、オリジナルとして歌っていくには抵抗があるんですね。女性の歌の場合は、全く演じて歌うしかないじゃないですか?だから、やりやすいっていう所があるんだけど、男の歌っていうのは、自分の本来で歌えるはずなのに、何か違うなあって感じちゃうことが多いんですよ」。はじめ、その言葉に意外な感じを受けたが、考えるうちに、なるほどと思わせられた。一般に夜の街で主に大人に歌われる作品を演歌系とした場合(彼は一時まで自分が演歌歌手だとは考えていなかったが、いつの間にか一方的に,演歌の枠に組み込まれているのに気付き、現在では演歌が"本物。であることを証明しようと意識を変えていると言う)、歌に登場する男は多少弱虫だろうがだらしなかろうが、大概は男っぽかったり男臭かったりして、一人称は『俺』。そして恋愛対象を『おまえ』と呼ぶ。言葉は、発する人間の意識の表われ。三書英史という人の中で自分が「俺」であることはあっても、相手の女性が「おまえ」であることは、その印象から想像しにくい。つまり、これは彼の生真面目な人柄が知れる一つのエピソードなのだ。中途半端にリアルを歌うか、リアルではないものを完全に演じ切るか?彼の中で答えは明確だ。

■彼自分であることが一番。誰にも負けてない

「僕には歌しかない。歌うことしかできない。でも、歌には自信を持ってます。僕より売れてる歌手はたくさんいますよね。その中で、自分に近い所で活動してる人と僕を比べて、誰々に比べたらお前は駄目だなんて言う人が、たまにいるんですよ。それじゃ、アイツには勝てないとか。そういう時に思うんですね、僕は負けてるのか?って。それなら、何が負けてて、どの点が駄目なのか教えてほしいって。だって、僕自身は確かにレコードの売り上げでは差があるかもしれないけど、歌うこと、歌手であることについては、自分であることが一番で、誰にも負けてないって思ってますからね。僕が負けてると思ってステージに立ってたら、聞いて下さるお客さんに申し訳ないじゃないですか?」彼の言葉を聞き、実はとても男っぽい人であることに少々驚く。芸者である母親に女手ひとつで育てられた三善。世の中で正しく意地を持って生きる意識と、自分を大切にする考え方が、息子には自然に注ぎ込まれた。「かなり強い性格だと思いますよ。楽天家だし。デビューしてから5年くらいして、段々レコードの売り上げが下がってきたんですね。そうなると仕事に休みの日が出来るようになってきたんですよ。最初の2年間なんて一日も休みがなかったから、そういう状況になったことが、僕の中ではむしろ嬉しかったりしましたよ(笑)。以前に三半規管に障害が出て、歌えなくなったことがあったんですけど、確かに不安はあっても絶望するようなことはなかったし、入院から穆帰までのー年間に経験したことで、また強くなったような気がしますしね」。まず、歌が好きだから歌手をやっている。お金はあった方がいいが、そのために歌っているわけではない。あらゆる分野で減り続けていると言われる"芸人。が、ここに一人。「いま、一番嬉しい時ですか?それはね、ステージで一雨』を及第点で歌えた時ですね。聞いて下さる方の期待に応えられたかなっていう感覚が、最高なんです」。